生活記 2

太初に言葉があった。
ことばは太初の前にはなかった。
私はことばの中で産まれた。
私は逆子ではなかったから、まずこのことを考える頭から外に出た。はじめからことばはあった。それ以前にもあった。
私は過去に重要な取材をした。私はいつどこで産まれ、誰がまずそのことを知ったか。

出張帰り、私は津駅から、米津プラッツ前行きのバスに乗った。乗客は私含め2名のみ。それから15分程度で最寄のバス停に着く。日曜午後三時頃、まだ日が高く、小春日和に誘われて、程なくバスを降りた。
横丁に入ると、津市随一の歓楽街大門の裏手である。あちらこちらにスナックやらラウンジのぎっしり詰まったささやかなビルが見える。
もともと小さな街だから、賑わいとは無縁の寂れたたたずまいである。そんな飲み屋の間を民家や閉めたままの商店が埋める。
私がそれらの建物の前でしばしば感じる人の目や吐息の気配が全くなかった。
向こうに大門の謂われである境内がある。まだ誰にも合わない。

続く