孤独

ある夏、大きな工場で働いた。がらんとした屋内で、真っ黒な粉塵を集めては、取り除いた。マスクもつけなかった。それが普通だと信じていた。
震災の傷跡や、手向けの花さえも残る街町を測量の手伝いに回った。何の為にそんな仕事をするのか、関心さえなかった。
貯水槽のメンテナンスを手伝った。数メートルもの深さの水槽が、地中に埋まっているのは驚いた。しかし危ない足場に跨って巨大な排水ポンブを持ち上げる仕事に我を忘れた。
工場を後に並木通りを抜け、夏の陽射しに顔に青いかげが落ちた。街を抜けるバスから空をかいま見る快感が誰もいない道に転がる。影がのびてゆく。日時計。隠喩の愛が凍っている。